TEDOYA TOGO MONTAGE

Life is colorful.

2017年10月

プロダクションノート バックナンバー
#1
  #2  #3  #4  #5   #6

グーチョキパー ビヨンド」には新旧のメンバーが勢ぞろいした。

主演はひろみとノブをバトンタッチする形となったいしいそうたろうさん、神部冬馬さん。
オリジナルキャストからは牛水里美さん、志村洋子さんが続投し、
じいちゃん役の小玉直治さんにも声だけだったけど、参加してもらえることに。

スタッフについても同様で、スケジュールを強引に合わせてもらったEvery Day手塚組精鋭部隊の照明・櫻井えみさんを招集。
山梨からは手塚より一世代下になる若手の神宮司健監督に監督補として参加してもらえることに。
撮影から助監督、車輛に機材、のちに編集までお願いすることになり、
彼がいなかったらビヨンドは間違いなく完成できなかった。
神宮司さんを引き合わせてくれたのは、高校の演劇部OGのといっても一回りも下のつるちゃんこと、鶴岡悠さん。献身的なサポートをしてもらった。
シナリオで直前まで悩んでいた手塚を支えてくれたのは、本業は俳優のかんちゃんこと、函波窓くん。お正月の鵺的の現場でのフットワークのよさを買って山梨に招集した。
さらにみっかる.TVの皆さんの全面協力を得て、あわただしく準備がはじまった。

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ロケハンでは懐かしい撮影現場と再会しつつ、現実に落とし込む作業。
クライマックスシーンの撮影場所選定が課題だった。
結婚式のシーンを書いといてなんだが、
書いている時から縮こまっていたらいい形にはならない。

いい場所が見つからない場合の想定や設定変更も一応横に置きつつ、
色々なご縁で誓いの丘イストアール、アイブライズさんにご協力を頂けることになり
現場の士気はますます高まった。


3月半ば、13年前の「グーチョキパー」でも象徴的なシーンで登場した直線道路からクランクインした。
茜とノブが再会するシーンである。
薄い晴れと曇り空が交互にやってくる感じが今回のビヨンドを表していた。

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週の頭の月曜日から5日間にわたって山梨県南アルプス市を中心に撮影が行われた。
暦は春と言えど、外は八ヶ岳おろしという強烈な北風が吹く極寒の状況。
というか真冬だった。

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いしいさん、神部さんはレギュラー番組の合間を縫って連日朝早くから夜遅くまでの撮影となった。
昼間のシーンの撮影は順調に進みペースがよかったものの、見せ場となるループ橋のふもとのナイトシーンには天気が味方せず2日連続で延期となり、さらに夜用の機材返却というタイムリミットが迫り、さすがに心が折れそうになった。
が、そのタイミングで卒業制作の相方、たなりゅうが東京から駆けつけてくれた。
数シーンだったけれど、たなりゅうのおかげもあり、極寒の山場をなんとか乗り越えることができた。

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撮影最終日は結婚式シーンに県内のボランティアエキストラの皆さんも参加していただく等、様々な方の協力のもと、なんとかクランクアップを迎えたのだった。

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ところがその直後、大変なことになった。

撮影終了後に新聞取材を受けているそばから寒気が止まらない。
クランクアップと共に緊張が解けたのか、自分の体の熱を感じていた。
インフルエンザだと諸々よろしくないので、打ち上げの前に念のため夜間診療の病院に行くことにした。

体感時間では待合でとてつもない時間待たされた気がするが、
計ってみれば熱が40度近くあり、予想通り風邪かインフルエンザかと思っていたら
何やら医師たちの様子がおかしい。

汚い話、撮影後半はずっと便秘だった。
久しぶりの撮影に体が緊張しているのは自覚していたが、
しまいには食欲もなくなって、最終日は昼の弁当がほとんど食べられなかった。
これまでと同じように撮影による緊張からのデリケートな体の反応かと思っていたら
どうやらこの便秘が元凶らしい。

ベッドで点滴を受けていると
どこかに電話をかける医師の声が遠くから聞こえてきて
「盲腸の疑いが非常に強い」
「腹膜炎起こしてる可能性も」

どうやら盲腸の、それもあまりよろしくない疑いが高いということで
そのまま大きな病院に向かうことに。
移動は人生初の救急車だった。

あれよあれよと、そのまま緊急入院となった。
3年前の入院がデジャヴのように押し寄せた。
あの時と違うのはあきらかな体の不調を自覚していることだ。
体感的には脳梗塞よりしんどい。

体調は万全にして臨んだはずなのになぜまたこうなるのか。
ベッドの上でOS-1のみ許される状況で天井を見上げるしかなかった。
というか、OS-1がポカリスエットみたいに甘くてうまい!(本来はしょっぱくて、これ結構やばい症状らしいです)
ナースステーション真ん前の個室って、どんなやばいんだよ、と。
数時間前の撮影現場が幻のように思えた。

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翌日、腹腔鏡による手術が行われた。
無事に手術が終わって麻酔から目が覚めるとうちの父・みつをがiPhoneでしかも動画で撮っていた。
状況が許されるならぶっとばしたいところだが、
いつのまにかiPhoneの操作を覚えている姿を見て、なんだか面白かった。

と次の瞬間妙に冷静になって1ヶ月後に迫った上映会の宣伝は自分が動けないし、
もっと言うとビヨンドの編集作業を止めてしまった。
今さら中止はありえないし、この状況をどうやってたて直すか。

といっても選択肢はそこにはほぼなく、編集を監督補の神宮司さんにお願いするしかなかった。
断ることもできたのに、編集を引き受けてくれた神宮司さんの男気に本当に感謝である。

とにかく体を復活させて、退院しないと何もできない。
時折届く関係者からのLINEが本当に力になったし、
復活したらやったるぞ、とそれしかなかった。
ベッドの上でやることはほぼないので、イメトレだけは入念にしてその時を待った。

10日間の入院を経て退院すると、その直後から編集と音楽制作、さらに宣伝活動が始まった。
待ったなしなのである。
しかし、体力の落ちた状態でこれが本当に大変だった。
お風呂で貧血で倒れそうになるし、食べても食べても体重が落ちるし、何かにつけて眠い。
体は本当によくできている。

時は上映会まで3週間を切ろうとしていた。
先行で編集を神宮司さんにお願いしていて本当に正解だった。
音楽作業についても実家の珠算塾に撮影時から詰所として組んでいたので、
そこに機材を持ち込んでもらい作業することに。

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映像尺が決まっていない状態で
音楽のあきさんには大変なご無理を言いながらも
オリジナル曲に加えて、トミーさんの作ってくれた13年前の音楽をベースにコード進行やアレンジを変える形でビヨンド用に進化させてもらった。
テンポやアレンジについてもわがまま言わせてもらったけれど、要求よりもはるかに期待値を超えて返ってくる楽曲たちに編集は背中を押されることになった。
個人的には本編中盤のギターの曲とエンディングが今回のお気に入り。

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4月になり東京はユジク阿佐ヶ谷、神戸は元町映画館で「Every Day」の上映があり、
山梨アンコール上映会の宣伝も本格化し、その合間で編集作業を進めながら
都内でじいちゃん役の小玉直治さんの声を収録した。
200歳まで生きる、と変わらない笑顔で語ったチャーミングな小玉さんに元気をもらった。

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その後デジタルの恩恵を受けて神宮司さんとデータをやりとりしながら編集や一部追加撮影が行われ、
上映会前日の上映会スタッフ向けの試写を経てのそこから感想をフィードバックして最終調整がギリギリまで行われ、上映会当日の朝に「グーチョキパー ビヨンド」は完成した。

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誤解を恐れず書くと、
最初はもっと肩の力を抜いたおまけみたいな形にさえなればいいとどこかで思っていた。
が、蓋を開けてみればそれは「Every Day」以来の作品制作で、
皆で本気で挑み、結果、きちんとした形となったのが本当に嬉しかった。

いしいさん、神部さんの他では普段見られない一面が焼きつけられた気がする。
内容についてはグーチョキパーしばりだったのもあって限りはあったけれど、
いつかまた違う作品で二人を撮ってみたい。
牛水さんの演技の深化、洋子さんの変わらなさも抜群だ。
サポートしていただいたみっかる.TVの皆さんの本領発揮というか、
それぞれが違う分野のプロフェッショナルであることから大人の遊びというか余裕みたいなものが作品の間口を広げてくれることになり、図らずも無意識に、新たな自分の扉を開くきっかけとなった最新作が完成したのである。

また10年くらいしたら最終章を。
なんて未来は少しデキすぎのような気もするけど、
ビヨンドの最後のカットは間違いなく、その先を示している。



ということでこの度、11/4(土)からはじまる「Every Day」のテアトル石和での興業初日に「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」を特別上映して下さることになりました。
13年前の作品とセットで短編の作品がホールではなく、映画館にかかるのは本当に奇跡です。
たくさん見に来て下さるともしかすると、最終章が長編として本当に企画されるかもしれません。
原点と最新作である「グーチョキパー」2作もEvery Dayと併せてお楽しみいただけたら幸いです。


おわり。
のようで、つづく。


山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。



【イベント情報】

11/4(土)19:00〜
初日舞台挨拶+「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」特別上映
※終了後、懇親会あり



11/5(日)13:00〜
シネ婚「Every Dayなシネ婚」

11/11(土)19:00〜
未公開映像集DX(関東初)

11/12(日)
女子力全開コメンタリー上映(関東初)


【お問い合わせ】
テアトル石和
〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田291
電話: 055-262-4674

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プロダクションノート バックナンバー
#1
  #2  #3  #4  #5   #6

2017年の年明けは
ロケットスタートだった。
演劇ユニット 鵺的のトライアル公演vol.1「フォトジェニック」の映像パートを担当することになった。
年末の関西での「Every Day」の上映の前後はその台本を読みながら女性を殺し、その死体写真を撮っているというカメラマンの話に頭の中のモードを切り替えていた。
年明け早々に舞台の本番があるため、帰京後のクリスマス、年末年始、大晦日返上してひたすら撮影だった。

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もちろんその横には
「グーチョキパー2(仮)」のことも頭にはずっとあった。

ひろみ、ノブ、茜はあれからどう生きてきたのだろうか。
それは反面、自分がどう生きてきたかも含めて晒される、そんな覚悟も持ちながら
舞台公演も終わり、やけに冷え込む極寒の2017年1月半ば、職場のパソコンに立ち上げているメールソフトに向かっていた。

実はEvery Dayの頃から企画書やシナリオを職場のOutlookのメール本文に一度書き出すという習慣がついてしまった。
それをプリントアウトして、もう一度清書するように再度打ち込む、という面倒な手法でもあるけれど、慣れてしまえばなんとやら。環境がいつしかそうさせた。だからか、最近はいきなりWordの画面を見ると手が止まってしまうくらいだ。
5分、10分のちょっとした作業の合間でコツコツ書いていった。

第一案として書いたのは、再会の話。
それぞれ一人ずつ会うことはあっても3人がまったく揃わないというもの。

あらすじはこうだ。
ひろみはそれなりに認知度のあるお笑い芸人になるも挫折し、地元に戻り、スーパーでアルバイトをしていた。ノブはあれから実家の店を継ぎ、デザインした手ぬぐいが世界的に評価され、今や時の人になっていた。そんな中、高校時代の同窓会が開かれることとなるが…。というもの。
クライマックスで茜が都会から帰ってくるが、3人が会うことはなく、俯瞰で見ると南アルプス市にそろっているというなんとも言えない悲壮感漂うお話だった。

スタッフからは即却下だった。
アンコール上映会で、この終わりはよろしくない。と。
おまけにグーチョキパー感がない、らしい。

こちらからすると、
グーチョキパー感とはなんぞや?
である。

ある程度年齢を重ねると
同級生や仲間が集まるとなれば、
その機会は限られてくる。
そしてその再会の場が
誰かの不幸であったりもする。
残念な日常への負い目というのか、
逃げというのか。
しばらく仕事のなかった
卒業直後の自分をふと思い出した。

ひろみ、ノブ、茜だって同じである。
地元でこの3人が集まる理由となれば、
成人式、結婚式、同窓会、お葬式。
さらに限られてくる。
予算やスケジュールの観点からも短編でいくとなれば、シンプルかつ濃縮還元でいくしかない。

言ったものの、問題を乗り越えるアイデアになかなかたどり着けないでうんうん唸っていると、
見かねたとあるスタッフが「ノブと茜が結婚するってのはどうでしょう?」と言った。

いやいや、あの二人の結婚は一番ないよ。
と即、否定して返した。

ん?ちょっと待て。
友人代表のあいさつでひろみがしゃべっている姿が浮かんだ。
調子こいて、自分の言葉に酔いしれている。
それをノブと茜が優しく見守っていて…

ダメ元で書いてみてくださいよ、
というスタッフの声にのせられるようにして書いたらこれがあっという間だった。

途端にあの3人の未来が見えてきた。
3人に加えて、かかせないのは姉の洋子だし、じいちゃんだ。
となれば父と母はまた旅行に行っている?
洋子の家族は登場する?

先行で久しぶりに志村洋子さんに電話して、
スケジュールを確認しているだけなのに
食い気味で出演快諾されたものだからさらに筆は進んだ。
そうか、これがグーチョキパー感か!
少しずつ続編の世界観が広がっていった。

初稿が書けたところで「みっかる.TV」に出演することになったので
メインキャストの顔合わせも兼ねて牛水さんと一緒に山梨に向かい、本番終了後の深夜に本読みを行った。
声を聴いて、監督の自分よりも同行していたうちの父・みつをが
「あの3人だ」と口走った。

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この時、牛水さんとも思わず目を合わせたくらい
いしいさんと神部さんが、ひろみとノブとしてそこにいたのだ。
と、ご本人たち、特に神部さんはいつも自分はノブをやっていたそねちゃんには似ていないというが、
見た目こそ確かに違うかもしれないけれど、声の響きや内に秘めている雰囲気がキャスティングの決め手だった。
(これ言っても信じてもらえないけど、本当です)

というか、似ている似ていないでそもそも選んでいない。
いしいさん、神部さんが役を引き継ぐことについては誰が何と言おうと、
どうしても2人で撮りたかったし、その絵がイメージできたからやることにしたのだから。
本読みから手ごたえを感じて、リライトの時は終始テンションが高かったのを覚えている。

立春を過ぎる頃、上映会のチラシの入稿〆切に合わせて
タイトルが「グーチョキパー ビヨンド」に正式決定した。
さあ、はじまる。

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つづく。
次回、10/31(火)最終回(予定)です。

山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。



【イベント情報】

11/4(土)19:00〜
初日舞台挨拶+「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」特別上映
※終了後、懇親会あり



11/5(日)13:00〜
シネ婚「Every Dayなシネ婚」

11/11(土)19:00〜
未公開映像集DX(関東初)

11/12(日)
女子力全開コメンタリー上映(関東初)


【お問い合わせ】
テアトル石和
〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田291
電話: 055-262-4674

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2016年6月。
1か月後に控えた初の長編「Every Day」の劇場公開を前に宣伝も追込みの時期に入っていた。
マスコミ試写や各種インタビューをはじめとする取材、ラジオ番組での番宣を経て、
ありがたいことにトークイベントを組んでいただけることになり、
宣伝の加瀬さん、主演の山本真由美さん、そして牛水里美さんと共に
母校である埼玉県は川越市にある尚美学園大学に向かっていた。

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映像を専攻する現役生たちを対象に
当時の学生生活や卒業後はどうだったのかを話し、
在学中に作った作品のダイジェストを観ながらトークを行うことに。

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ちらちらと1年次からの実習作品が順に視界に見切れるようになり、
卒業制作の「グーチョキパー」は当然のことながら映し出された。
再会の瞬間は突然だった。

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しゃべるのを忘れて思わず見入ってしまった。
約10年ぶりだ。
粗さはあれど、まっすぐに作っていた当時の自分に再会したのである。

この少し前の話。
久々に牛水里美さんとお茶をした。
その時、どちらからともなく「グーチョキパー」の続編とかそろそろ作ってもいいかもね、という話になり、続編をやるとしたら、と二人して夢中になってアイデアを出し合った。

ここで初めてキャスティングについて具体的なアイデアとしていしいそうたろうさん、神部冬馬さんの名前をはじめて挙げた。
ストーンゴッドという舞台ユニットを組んでいる二人の演技している姿はすでに頭にあったので、普段テレビで見せていない面をどう出すのか。

2人が、特にいしいさんがひろみをやった高橋君と顔の雰囲気が似ているのもあって、
ならばいしいさん、神部さんが成長したひろみとノブだったらイケると、牛水さん相手に話した。
2人の画像を見ながら「そっくりー!」と牛水さんが言ってくれたのもあり、大いに盛り上がった。
でも、この時は登場人物たちの状況がうまい具合に固まらず気が付いたら終電でタイムアウトとなり、解散した。

実は続編について挑もうとした時期が何度かあった。
主演の二人が俳優をしているわけではないので製作することは不可能だとしても
考えるだけならとイメージすると、浮かんでくる話がすべて閉塞感漂う話になり、すぐさま立ち消えになった。

それはそうである。
あの3人が高校を卒業してから久々に会うとなると、それぞれの時間が流れることになる。
3人全員がまた会うことなんてあるだろうか。

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ひろみはあの後、茜を追うように東京に出て芸人を目指したとしても売れるかどうかは別だし、ノブは街に残って、本当に納得したのだろうか。
茜は18歳の夏に東京に出ていって2人にまた会いたいなんてそんな純粋なままいられるだろうか。
ひろみと茜は付き合ったのか。
いや、続いてなさそうだな。
と、浮かぶ話とその顛末が苦くすべてダークな結末ばかりだったので、
知り合いと会えば酒のつまみにたまに話す、空想にすぎなかった。

そして、2016年の川越。
当時のことを牛水さんや教授と話すうちに
それから現役生からの質問に答える際に
何を考えて、何を大切にしていたのか
言葉にすることで自分なりに意外と整理がつけられていることに驚いた。

それからさらに時は流れて2016年年末。
地元・南アルプス市での「Every Day」のアンコール上映会の実施が決定した。
このイベントの目玉に、賭けに出ることにした。

いしいそうたろうさん、神部冬馬さん主演で「グーチョキパー」の続編をやる!

スタッフは意外と反対しなかった。
しきりに手塚の体調や予算調達、スケジュール等、やること前提での現実面を重視してもらったのがありがたかった。
こちらの気持ちなんぞお見通しだったんだろう。

年末の関西上映初日の前夜にぶつかったみっかる.TVに神戸のホテルから電話の音声を生中継してもらい、
そこで制作発表した。

言ってしまったぞ、自分!

しかし、この時シナリオはおろか、内容については全くの白紙の状態だったのである。


つづく。


山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。



【イベント情報】

11/4(土)
初日舞台挨拶+「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」特別上映
※終了後、懇親会あり



11/5(日)
シネ婚「Every Dayなシネ婚」

11/11(土)
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11/12(日)
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【お問い合わせ】
テアトル石和
〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田291
電話: 055-262-4674

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11/4(土)からの「Every Day」のテアトル石和の劇場公開に関連して山梨県の各番組に出演します。
各番組とも山梨以外の方もwebやradikoでも聴けますので、よろしければぜひとも。

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【出演情報】

《ラジオ》
●10/25(水)12:00〜15:00
76.3MHz エフエム甲府「フリーダム!」
http://www.fm-kofu.co.jp/program/freedom/
※13時15分頃

山梨県以外の方も下記の方法でお聴きになれます
http://www.fm-kofu.co.jp/listen/

●11/1(水)13:00〜16:30
765kHz YBSラジオ「はみだし しゃべくりラジオ キックス」
http://www.ybs.jp/radio/kikkus/
15時台コーナー「いしいキネマ館」

radiko.jpプレミアム(有料)にて山梨県以外の方もお聴きになれます。
http://radiko.jp/

※出演や日程についての中止・変更等も場合もございます。あらかじめご了承ください。

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#1
  #2  #3  #4

卒業制作作品の提出は翌年の1月末だった。
いわゆる卒業論文と同等のものになるので、期限厳守しなければ卒業はできない。

2004年11月にクランクアップした「グーチョキパー」は急ピッチで編集が進められた。
撮影で出遅れた分、その全体像が形作られるまではゼミの中のどの組よりも速かった。
最初にあがったものはほぼノーカットで70分越えだったと記憶している。

編集方針について教授陣と大きくすれ違い、壮絶な戦いを経て、大幅にカットすることになった。
年末年始の冬休みに一時休戦、
年明け早々から再び戦って、
最終的に42分で尺が確定した。

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当時は受け入れていなかったこのテンポも今となればいい選択だった。
小気味のいいテンポのよさはこの作品が映画としてではなく、
大学のカリキュラム上、ドラマという位置づけであるからにも由来するが、
編集に第三者の視点が加わったことで
現在までに続くどの作品にもない魅力のひとつにもなっている。

「グーチョキパー」は自身初のオリジナル音楽のついた作品でもあった。
音楽学科もある尚美学園大学の特色でもあるが、すぐそこに音楽のスペシャリストたちが大勢いた。

担当してくれたのは、
「おしん」「家政婦は見た」シリーズ、
歌では「もしもピアノが弾けたなら」等を手掛けた坂田晃一さんのゼミ所属のトミーさんこと冨永佳寛さん。

ピアノ曲を多用してきたこれまでと違い、
トミーさんがつけてくれたギターメインの音楽がとても新鮮だった。
師匠の坂田先生ゆずりのアイデアとバリエーションの豊かさでブルースに、U2っぽいロック、かと思えばストリングスでと面白い試みもたくさん。
音楽の作業は今でも楽しいけれど、
映像と劇伴の考え方やロジックをたくさん教えてもらったし、刺激的な時間だった。

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その後、校内の卒業制作発表会を経て、
映像系の大学・専門学校の卒業制作作品が集まる「そつせい祭」というイベントでのみ上映され、審査員だった林海象監督に褒められたのを最後にそれ以降は関係者がたまに見る程度のいわゆるよくある卒業制作作品の顛末、ああ昔はがんばったね、であった。

一方、自分は完全に燃え尽きていた。
そして、ああすればよかった、こうすればよかった、の反省と後悔の大きな波に飲み込まれていた。
きりがないことだけど、当時はまわりの評判とは裏腹に本当に悔しかったし、苦しかった。
結果、ここから約10年「グーチョキパー」を自ら見ることはしなかった。

封印したのである。

とあくまでこれは手塚個人の視点からの話で、実際は少し違っていた。

「グーチョキパー」の自体は関係者用にコメンタリーやメイキングをつけたDVDにしていたのもあり、同級生はじめ、関係者は定期的に見ていたらしい。
特に大学時代の親友の奥さんは結構な頻度で鑑賞していたとのこと。
会えばその都度、作品の魅力を熱心に伝えてくれるという面白い逆転現象も起きた。

おまけに大学の授業でも使われ、
本編がBGMなしの素材になり、
ここに劇判をつけるという教材にもなっていた。
あとは出演者の関さんや小玉さんがNHKの大河ドラマや映画に出ていると、
色々な人からメールをいただいたり。

ありがたいことに
自分から見返すことをしなかった時間の中で、遠くで、あるいは近くで作品は誰かの心の中に存在していたのである。
それなのに、バカみたいに長い時間自分で勝手に封印していたのである。

そして、この封印が解けたのは、
突然のことだった。

つづく。



山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。



【イベント情報】

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※終了後、懇親会あり



11/5(日)
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11/11(土)
未公開映像集DX(関東初)

11/12(日)
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「そうやって別れ道の真ん中に突っ立ってるだけなんだよ」

難産だった。
企画は決まっても
やはりシナリオが書けない。

とはいえ、どうにかするしかないので
相方の田中竜太(以下 たなりゅう)と先行で山梨をロケハン(というかシナハン)しながら頭ではなく、体で感じることからはじめた。

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冒頭に書いたセリフは
当時の自分に対する正直な気持ちだった、
とは言い難く、
でも、ふとこのセリフが浮かんでシナリオを書き始めた。
別れ道の話になるのかな、
くらいの気持ちだったと思う。

キャストは誰にしようかあまり考えず書いて、浮かんだ顔が大学で出会って熱い日々を過ごしてきたマーシーこと高橋君とそねちゃんこと曽根原君の二人だった。
大学1年の春休みに幻の長編「NO WAY!?」でも大好きな役をやってくれたが、撮影終了間際で頓挫していた失敗があり、リベンジも兼ねてダメ元でオファーすると、二人は快諾してくれた。
頭に二人の顔と声でイメージできるため、筆が一気に進んだ。

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キャスティングも同時進行で進められ、大学の同級生からは音楽学科から短編に出てもらった志村洋子さんも参加が決定。

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洋子さんは例えるなら三木聡監督作品で言えばふせえりさん。
予定調和の空気を躊躇なくぶっ壊す最強の秘密兵器。
音楽に関係する人はとにかくリズム感がいい。だからセリフを話すと役者さんには出せない雰囲気も一緒にまとうことになり、それがスパイスとなる。

そして、のちにEvery Dayやビヨンドまで長い付き合いとなる
この時初めましての牛水里美さん、
ENBUゼミナールでクラスメイトだった関寛之さん、じいちゃん役の小玉直治さん、バラエティに富んだメンバーがそろった。

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しかし、時は9月も終わりにさしかかり、
田んぼの稲刈りが始まっていて、夏設定のためには別れ道のシーンとラストの駅は一刻も早く撮らねばならない。
何事も時間に追いかけられるのは本当に苦しい。
どんどん秋めいている中、劇中の夏の終わりという設定を追いかけるのは想像以上に大変だった。

この頃ノブ役のそねちゃんは就職活動も本格化していて、
都内での面接から帰ったばかりの彼を車で拉致して現場に連行してリハしたりして、
深夜のにんにくたっぷりのとんこつラーメンを皆で食らい、
若さと気合いだけで、準備を進めた。

シナリオが未完成のまま、埼玉県東村山市で最初に書きあがった別れ道のシーンからクランクインした。
そして、次に撮ったのが千葉の小湊鉄道の協力で実現した無人駅でのクライマックスシーンという綱渡りのようなスケジュール。
この2シーンの手ごたえがよかったおかげでいろいろなものがうまく転がり始めた。
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物語の真ん中から書き始めて、
穴があいた虫食い状態のままで撮影しながら少しずつ書き進め、次第に全体像が書きあがるという特殊なつくり方は後にも先にもこの作品だけである。
クライマックスのうぐいす嬢のアナウンスの暴走というシーケンスでシナリオが完全に仕上がった時は、嬉しさのあまり叫んだ。

シナリオが書きあがると、先行で行ったロケハンが活きてくるのである。
というか、そこで撮ることを決め込んで書いていたので
残りは必然的に土地勘のある故郷・南アルプス市で撮影することに。

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毎週末、金曜日の深夜に川越を出発し、
山梨の実家に到着すると皆で仮眠、
場合によってはそこから飲んで、
夜が明けてから土日かけて撮影し、
渋滞の中央道を乗り越えて帰り、
再び週末は撮影を繰り返し、
11月中旬にクランクアップを迎えた。

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人に恵まれて本当にチームワークの良い組だった。
出番がない時は牛水さんと曽根ちゃんが実家の台所で皆のご飯作ってくれたりしながらにぎやかだった。
撮影監督のたなりゅうが雨男というのもあってか、
前半はすべて台風がやってくるという事態に
皆で八つ当たりするしかなかったのもいい思い出です。

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ちなみにこの撮影現場の食事の時の号令が
「つるかめのように 長生きしたければ つるつる飲むな かめよ、かめかめ いただきます」
だったことも手塚にかなり印象を残し、のちの「つるかめのように」につながるのである。

と、なんとか撮影を終えたのもつかの間。
この先の難関を当時の私は知らないのであります。

つづく。

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山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。


【イベント情報】

11/4(土)
初日舞台挨拶+「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」特別上映
※終了後、懇親会あり



11/5(日)
シネ婚「Every Dayなシネ婚」

11/11(土)
未公開映像集DX(関東初)

11/12(日)
女子力全開コメンタリー上映(関東初)


【お問い合わせ】
テアトル石和
〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田291
電話: 055-262-4674

10月の月イチ上映会は芸術の秋にふさわしく、
というか、とんでもなく贅沢で光栄な上映となります。

へちまのある甲府市の紅梅通り文化祭にあわせて富田克也監督の「サウダーヂ」と共に「Every Day」が上映されます。
個人的には大事件です。

僕も甲府のまちでサウダーヂ見る気満々です。

手塚悟監督作品 月イチ上映会 #4 紅梅通り文化祭特別企画 山梨出身映画監督特集上映

【日時】
2017年10月14日(土)

【場所】
文化のるつぼ へちま 3階へちまSTUDIO
〒400-0032 山梨県甲府市中央2-13-20
TEL:055-236-5651

【上映作品・タイムテーブル】

11:00 Every Day



14:00 サウダーヂ




【チケット】
予約:1,200円 当日:1,500円
学割(予約/当日):1,000円

※チケットは各作品ごとお買い求めください
※各回32席限定 入替制
※別途1ドリンクオーダーとなります。

【ご予約・お問い合わせ】
文化のるつぼ へちま TEL:055-236-5651

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プロダクションノート バックナンバー
#1
  #2  #3  #4

卒業制作の作品については
企画書と初稿をセットで提出、
が大学3年の春休みの課題だった。

大学1年の頃からあたためていた
ヒーロー戦隊物のコメディ作品を企画した。
大学4年になった新学期早々意気揚々としたプレゼンだったが、実はシナリオがまったくもって書けていなかった。
冷や汗でその場を取り繕った自分だったが、
しばらく苦しめられることをこの時は知る由もなかった。

その少し前の話。
大学3年の秋から新宿は曙橋にあったENBUゼミナール(現在は五反田)に通い始めていた。
第一線で活躍する映画監督や舞台の演出家が講師をつとめるカルチャースクールである。

所属したのはコラボレートクラスといって
同じクラスに俳優志望と映画監督志望が机を並べ、
企画から制作までをスピーディにすることで互いに刺激を与えながら1年間映画を学び、卒業制作作品はテアトル新宿で上映する、という今となれば超贅沢なカリキュラムだった。

クラスメイトは自分よりも年上の大人たちばかり。
しかもその誰もが経験豊富な人生を送ってきた人たちばかりだったので、入学早々自分の未熟さを痛いほど感じることになった。

(勝手な)プレッシャーからか、全くアイデアが浮かばないという事態に陥ってしまった。
ダブルスクールで映画を作ってデビューするんだ、なんて思っていたその青写真は無残にも打ち砕かれた。

そのスランプは深刻だった。
今となれば力みすぎだぞ、自分、
と思えることばかりだけれど
当時は本当にアイデアも浮かばないし、
ペンも動かなかった。

ダムの水が干上がるような、
乾いたぞうきんをずっとしぼるみたいな、
あきらかにこれまでと違う感覚で追い込まれていった。

講師の長澤雅彦監督が繰り返し言っていた
「書けた人こそすべてだ」
という言葉が今でも心に響いている。

当時の自分はこの言葉の意味はもちろん
それに応えることもできず、
しびれをきらした俳優志望の人の方がアイデアをもってきて、しまいには自分で脚本を書いて監督までするほどの弱肉強食。
結果、ENBUゼミナール在籍時の製作本数は短編2本、というふがいない結果で終えた。

そのスランプは年が明けても続き、
あっという間に大学4年になっていた。
シナリオがいっこうに書けない、
ということで新しい企画を考えるもゼロベースの薄っぺらさでは全くもって追いつかない。

初夏を過ぎると、新しい企画自体も浮かぶことがなくなった。
卒業制作の相方のたなりゅうこと、田中君も辛抱強く待っていてくれたけど、その不安や苛立ちはこちらにもわかるほどだった。気が付いたら夏休みも半分過ぎようとしていて、体重も周囲から指摘されるくらい急激に増加していた。

冷静に考えれば、スケールの大きい実現性のない企画をやろうとしていたことが原因だった。
予算から技術から背伸びしても届かないような夢物語を学生の卒業制作でやるにもたかが知れている。
(今ならクラウドファンディング等で資金面の調達方法はありますが、当時映画学科の学生たちは基本的に入学時から卒業制作の制作費のためにアルバイトで調達するのが主流でした)

動きが出てきたのは、
お盆に実家に帰った時だった。

前年に祖父が亡くなったので、
新盆で様々な人が実家に訪ね、
どんな人だったかたくさん話したのもきっかけとなり、亡くなった祖父のことを書いてみようとぼんやりと頭の中に浮かべていた。
風呂場で良く聞いた戦争の時の話を思い出していた。

埼玉に戻り、大学の友達とファミレスに入って、またその友達も浮かんでいないという状況でドリンクバーで注いだ炭酸の抜けたコーラを飲みながら
残酷なことを明るく伝えたいよね、
と言うと、勝ち負けの話からじゃんけんに飛び火し、

「チョキはグーに勝てる」

というキーワードが
会話の中から飛び出してきたのである。

やさしかった祖父の声、
故郷の風景、家族、
すべてが繋がったような気がして、
「グーチョキパー」とネタ帳に書きとめた。

8月ももう終わりそうな日のことだった。
いつの間にか故郷が市町村合併し、
「南アルプス市」と名前を変えていた。

つづく。

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山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。


【イベント情報】

11/4(土)
初日舞台挨拶+「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」特別上映
※終了後、懇親会あり



11/5(日)
シネ婚「Every Dayなシネ婚」

11/11(土)
未公開映像集DX(関東初)

11/12(日)
女子力全開コメンタリー上映(関東初)


【お問い合わせ】
テアトル石和
〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田291
電話: 055-262-4674

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