プロダクションノート バックナンバー
#1 #2 #3 #4
「そうやって別れ道の真ん中に突っ立ってるだけなんだよ」
難産だった。
企画は決まっても
やはりシナリオが書けない。
とはいえ、どうにかするしかないので
相方の田中竜太(以下 たなりゅう)と先行で山梨をロケハン(というかシナハン)しながら頭ではなく、体で感じることからはじめた。
冒頭に書いたセリフは
当時の自分に対する正直な気持ちだった、
とは言い難く、
でも、ふとこのセリフが浮かんでシナリオを書き始めた。
別れ道の話になるのかな、
くらいの気持ちだったと思う。
キャストは誰にしようかあまり考えず書いて、浮かんだ顔が大学で出会って熱い日々を過ごしてきたマーシーこと高橋君とそねちゃんこと曽根原君の二人だった。
大学1年の春休みに幻の長編「NO WAY!?」でも大好きな役をやってくれたが、撮影終了間際で頓挫していた失敗があり、リベンジも兼ねてダメ元でオファーすると、二人は快諾してくれた。
頭に二人の顔と声でイメージできるため、筆が一気に進んだ。
キャスティングも同時進行で進められ、大学の同級生からは音楽学科から短編に出てもらった志村洋子さんも参加が決定。
洋子さんは例えるなら三木聡監督作品で言えばふせえりさん。
予定調和の空気を躊躇なくぶっ壊す最強の秘密兵器。
音楽に関係する人はとにかくリズム感がいい。だからセリフを話すと役者さんには出せない雰囲気も一緒にまとうことになり、それがスパイスとなる。
そして、のちにEvery Dayやビヨンドまで長い付き合いとなる
この時初めましての牛水里美さん、
ENBUゼミナールでクラスメイトだった関寛之さん、じいちゃん役の小玉直治さん、バラエティに富んだメンバーがそろった。
しかし、時は9月も終わりにさしかかり、
田んぼの稲刈りが始まっていて、夏設定のためには別れ道のシーンとラストの駅は一刻も早く撮らねばならない。
何事も時間に追いかけられるのは本当に苦しい。
どんどん秋めいている中、劇中の夏の終わりという設定を追いかけるのは想像以上に大変だった。
この頃ノブ役のそねちゃんは就職活動も本格化していて、
都内での面接から帰ったばかりの彼を車で拉致して現場に連行してリハしたりして、
深夜のにんにくたっぷりのとんこつラーメンを皆で食らい、
若さと気合いだけで、準備を進めた。
シナリオが未完成のまま、埼玉県東村山市で最初に書きあがった別れ道のシーンからクランクインした。
そして、次に撮ったのが千葉の小湊鉄道の協力で実現した無人駅でのクライマックスシーンという綱渡りのようなスケジュール。
この2シーンの手ごたえがよかったおかげでいろいろなものがうまく転がり始めた。
物語の真ん中から書き始めて、
穴があいた虫食い状態のままで撮影しながら少しずつ書き進め、次第に全体像が書きあがるという特殊なつくり方は後にも先にもこの作品だけである。
クライマックスのうぐいす嬢のアナウンスの暴走というシーケンスでシナリオが完全に仕上がった時は、嬉しさのあまり叫んだ。
シナリオが書きあがると、先行で行ったロケハンが活きてくるのである。
というか、そこで撮ることを決め込んで書いていたので
残りは必然的に土地勘のある故郷・南アルプス市で撮影することに。
毎週末、金曜日の深夜に川越を出発し、
山梨の実家に到着すると皆で仮眠、
場合によってはそこから飲んで、
夜が明けてから土日かけて撮影し、
渋滞の中央道を乗り越えて帰り、
再び週末は撮影を繰り返し、
11月中旬にクランクアップを迎えた。
人に恵まれて本当にチームワークの良い組だった。
出番がない時は牛水さんと曽根ちゃんが実家の台所で皆のご飯作ってくれたりしながらにぎやかだった。
撮影監督のたなりゅうが雨男というのもあってか、
前半はすべて台風がやってくるという事態に
皆で八つ当たりするしかなかったのもいい思い出です。
ちなみにこの撮影現場の食事の時の号令が
「つるかめのように 長生きしたければ つるつる飲むな かめよ、かめかめ いただきます」
だったことも手塚にかなり印象を残し、のちの「つるかめのように」につながるのである。
と、なんとか撮影を終えたのもつかの間。
この先の難関を当時の私は知らないのであります。
つづく。
山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。
【イベント情報】
11/4(土)
初日舞台挨拶+「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」特別上映
※終了後、懇親会あり
11/5(日)
シネ婚「Every Dayなシネ婚」
11/11(土)
未公開映像集DX(関東初)
11/12(日)
女子力全開コメンタリー上映(関東初)
【お問い合わせ】
テアトル石和
〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田291
電話: 055-262-4674
#1 #2 #3 #4
「そうやって別れ道の真ん中に突っ立ってるだけなんだよ」
難産だった。
企画は決まっても
やはりシナリオが書けない。
とはいえ、どうにかするしかないので
相方の田中竜太(以下 たなりゅう)と先行で山梨をロケハン(というかシナハン)しながら頭ではなく、体で感じることからはじめた。
冒頭に書いたセリフは
当時の自分に対する正直な気持ちだった、
とは言い難く、
でも、ふとこのセリフが浮かんでシナリオを書き始めた。
別れ道の話になるのかな、
くらいの気持ちだったと思う。
キャストは誰にしようかあまり考えず書いて、浮かんだ顔が大学で出会って熱い日々を過ごしてきたマーシーこと高橋君とそねちゃんこと曽根原君の二人だった。
大学1年の春休みに幻の長編「NO WAY!?」でも大好きな役をやってくれたが、撮影終了間際で頓挫していた失敗があり、リベンジも兼ねてダメ元でオファーすると、二人は快諾してくれた。
頭に二人の顔と声でイメージできるため、筆が一気に進んだ。
キャスティングも同時進行で進められ、大学の同級生からは音楽学科から短編に出てもらった志村洋子さんも参加が決定。
洋子さんは例えるなら三木聡監督作品で言えばふせえりさん。
予定調和の空気を躊躇なくぶっ壊す最強の秘密兵器。
音楽に関係する人はとにかくリズム感がいい。だからセリフを話すと役者さんには出せない雰囲気も一緒にまとうことになり、それがスパイスとなる。
そして、のちにEvery Dayやビヨンドまで長い付き合いとなる
この時初めましての牛水里美さん、
ENBUゼミナールでクラスメイトだった関寛之さん、じいちゃん役の小玉直治さん、バラエティに富んだメンバーがそろった。
しかし、時は9月も終わりにさしかかり、
田んぼの稲刈りが始まっていて、夏設定のためには別れ道のシーンとラストの駅は一刻も早く撮らねばならない。
何事も時間に追いかけられるのは本当に苦しい。
どんどん秋めいている中、劇中の夏の終わりという設定を追いかけるのは想像以上に大変だった。
この頃ノブ役のそねちゃんは就職活動も本格化していて、
都内での面接から帰ったばかりの彼を車で拉致して現場に連行してリハしたりして、
深夜のにんにくたっぷりのとんこつラーメンを皆で食らい、
若さと気合いだけで、準備を進めた。
シナリオが未完成のまま、埼玉県東村山市で最初に書きあがった別れ道のシーンからクランクインした。
そして、次に撮ったのが千葉の小湊鉄道の協力で実現した無人駅でのクライマックスシーンという綱渡りのようなスケジュール。
この2シーンの手ごたえがよかったおかげでいろいろなものがうまく転がり始めた。
物語の真ん中から書き始めて、
穴があいた虫食い状態のままで撮影しながら少しずつ書き進め、次第に全体像が書きあがるという特殊なつくり方は後にも先にもこの作品だけである。
クライマックスのうぐいす嬢のアナウンスの暴走というシーケンスでシナリオが完全に仕上がった時は、嬉しさのあまり叫んだ。
シナリオが書きあがると、先行で行ったロケハンが活きてくるのである。
というか、そこで撮ることを決め込んで書いていたので
残りは必然的に土地勘のある故郷・南アルプス市で撮影することに。
毎週末、金曜日の深夜に川越を出発し、
山梨の実家に到着すると皆で仮眠、
場合によってはそこから飲んで、
夜が明けてから土日かけて撮影し、
渋滞の中央道を乗り越えて帰り、
再び週末は撮影を繰り返し、
11月中旬にクランクアップを迎えた。
人に恵まれて本当にチームワークの良い組だった。
出番がない時は牛水さんと曽根ちゃんが実家の台所で皆のご飯作ってくれたりしながらにぎやかだった。
撮影監督のたなりゅうが雨男というのもあってか、
前半はすべて台風がやってくるという事態に
皆で八つ当たりするしかなかったのもいい思い出です。
ちなみにこの撮影現場の食事の時の号令が
「つるかめのように 長生きしたければ つるつる飲むな かめよ、かめかめ いただきます」
だったことも手塚にかなり印象を残し、のちの「つるかめのように」につながるのである。
と、なんとか撮影を終えたのもつかの間。
この先の難関を当時の私は知らないのであります。
つづく。
山梨・テアトル石和
2017.11.4(土)〜11.17(金)
※タイムテーブル、ゲストの詳細は劇場までお問い合わせください。
【イベント情報】
11/4(土)
初日舞台挨拶+「グーチョキパー」「グーチョキパー ビヨンド」特別上映
※終了後、懇親会あり
11/5(日)
シネ婚「Every Dayなシネ婚」
11/11(土)
未公開映像集DX(関東初)
11/12(日)
女子力全開コメンタリー上映(関東初)
【お問い合わせ】
テアトル石和
〒406-0023 山梨県笛吹市石和町八田291
電話: 055-262-4674